ドラム缶王の日記

62歳で個人事業主となり、中古ドラム缶に特化した仕事に邁進しています。アメブロ『ドラム缶王のブログ』を皮切りに、gooブログ『ドラム缶王ライフ』、そしてFC2ブログ『ドラム缶王ウィスパー』を立ち上げました。辿り着いたyahoo!ブログ『ドラム缶王の日記』がサービス終了で、はてなブログに引っ越してきました

中古ドラム缶の製造方法(TEXTメモ)

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突然ですが、中古ドラム缶に関する製造方法の説明書みたいなのもが欲しいと,ユーザーさんのリクエストあり。
そんなもん、この世に存在しないから、自家製で作ります。
メモ代わりに、SNS使用します。
 
 
・・・クローズタイプの中古ドラム缶の製造工程・・・
 
  中古ドラム缶業界を知るうえで大切なことは、製造工程でしょう。何はともあれ、販売するには、物を作らないことには、話になりません。
とは言いましても、中古ドラム缶業界における、製造に関するパターンは千差万別です。ここでは、主に3パターンについて考察したいと思います。いまから掲げる3つのパターンは、業界における基本路線というか、もっともシンプルな様式です。
 
先ずもって、一番必要なのは、クローズドラム(密閉タイプ・天板固着式タイプ)の更生工程です。別名、洗浄工程とも申します。 
次には、オープンドラム缶(開閉タイプ・天板取り外し式タイプ)の加工工程でして、これには、洗浄したり、焼いて加工したりの2パターンがあります。が、一般的には、蓋をカットして焼くことを指します。
さらに、その他、複合容器の製造パターンがあります。具体的には、ケミドラム関係などの加工です。まあ、このケースは、洗浄工程から入るケースと、焼き工程から入る場合が存在します。
 
一般的なものでも、これだけのケースが考えられます。が、その他いろんなプロセスがあり、すべてを紹介することは、相当のロスがありますので、ここでは基本ケースのみの説明にとどめます。設備的なことを考えても、いまから説明するすべてが、揃っているということはまったくありませんし、各社各様、個性を発揮して、創意工夫で製造工程を組み立てております。
 
ゆえに、更生ドラム缶会社各社の会社案内、またはホームページの製造工程図を参照しても、基本ベースは合致していても、微妙に異なっております。そこで、製造工程につきまして何を参考にすべきかですが、一般的にはNDK青年部会が発行している『ドラム缶の基礎知識』がございます。私も初版発行に際しまして執筆した身ではありますが、少し中小の再生業者には現実的でないことが記載されているように思っていますので、模倣はやめます。
よって、いまから記載する製造工程は、私が勝手に工場を作り、レイアウトしたものになります。
 
 
・・更生クローズドラム缶の製造工程・・
 この更生クローズドラム缶というのは、広く中古クローズ缶を意味するほか、委託洗浄ドラム缶、あるいは工程の部分応用にておこなう、中古ケミドラム缶や洗浄ケミドラム缶、中古鉄仕上げオープンドラム缶、洗浄オープンドラム缶を指します。また、各種ステンレスドラム缶の洗浄もこのカテゴリーに入ります。
 
 が、ややこしいので、一般的なクローズドラムの洗浄加工について、説明します。以下、フローチャートを列挙します。
 
 
缶の選別、投入
その日の生産計画に基づいて、洗浄すべきドラム缶を選別し、ラインに投入します。
また、内容物によっては、別工程で、予備洗浄にかけます。
 
*難洗浄と判断されたもの、たとえば、樹脂系、可塑剤系、芳香族系、植物油系、動物油系などのドラムは、別ラインで、前処理と呼ばれる予備洗浄をおこなったのち、投入されます。
その理由は、たとえば樹脂や可塑剤系統は、通常のラインでは、完全洗浄が極めて困難ゆえ、一度、内容物を緩めておく意味でおこないます。
芳香族系といっても、然程臭気がないものは問題なく、いきなり通常のラインに投入します。が、強い臭気を放つものは、直接投入すると作業環境が悪くなるので、脱臭をおこなう必要が有ります。
植物油や動物油脂も、原則、直接投入、厳禁です。これは、洗剤の急速な劣化を招くだけでなく、排水時にBOD(生物化学的酸素要求量)やCOD(化学的酸素要求量)の基準値が極端に上昇するからです。ですから、動食油系のドラム缶は、洗浄することはせず、オープン缶などの加工に回すケースが多いのです。
 
*前処理に使用される洗剤は、樹脂や可塑剤は、アルカリ系のものが、一般的です。
芳香族系については、消臭剤を使用するのがベターですが、アルカリ洗剤でも可能です。
動植物油のドラム缶につきましては、灯油や食器洗浄剤を使用するのがいいと思いますが、億劫な点、コストの観点からアルカリ系の洗剤でも、交換率を高くすれば可能です。
 
*樹脂缶につきましては、基本的には洗浄の可否判断が難しく、また、完全完全にクリーンに仕上がる保障もないので、オープン缶などの加工に回すケースが多いです。
どうしても有効活用がしたいとか、原缶が不足していて切羽詰っているというときは、洗浄しなくてはいけません。このときは、前処理に少し濃い目のアルカリ洗剤を使用するといいでしょう。
ただ、洗剤の濃度につきましては、ミセル生成濃度(MCM)があって、過剰に濃くしましても、洗浄力はアップしません。逆に、リンス不十分になったり、鉄の表面が変色したりします。家庭用の洗濯石鹸と同様、適正濃度を守ることが必要です。
このことは、④内部洗浄における洗剤も同じですので、絶対に覚えておいてください。
 
*樹脂缶につきましては、いくら洗浄しても、無理なものが、多々あります。一例を言いますと、EPXやFRP関係などです。
 
*では、樹脂缶の洗浄予測と申しましょう
か、洗浄できるものと、できないものの見分ける方法を、教えます。これは、企業秘密に近い、職人芸ですので、経験が必要になりますが、とりあえず文書化します。
まず、人差し指か中指に、唾を吐きかけてください。そして、その指に内容物の樹脂を取り、親指で擦ってください。このとき、粘り気はあると思いますが、スベッと樹脂分が伸びたら、洗浄可能です。ねちょっと
していて、ぜんぜん伸びを感じなかったら、まず、洗浄不可能です。
この、すべすべ感、ネチョネチョ感は、経験と感覚ですので、これ以上の説明は無理です。
ただ、この方法は、皮膚を冒す恐れがあり、おすすめできませんが、指サックやゴム手袋を装着していては、絶対に判別できません。
   
*多くの樹脂缶をクリーンに洗浄する適な方法は、シンナーやトルエンなどの溶解力の強い溶剤を使うのがベストでしょうが、リスクもあり、また廃液処理も面倒だし、加えてコストもかかるので、あまりお勧めできません。
 
*原缶のライン投入前に開栓する折は、とくに夏季ですが、缶内が膨張しており、内容物が飛散しますので、顔にかかったり、皮膚に飛散したり、目に入らぬよう注意が必要です。飛散を最小限にするために、なるべく、小栓から開けることを、お勧めします。
 
*作業時は、ゴム手袋の装着、遵守です。
 
*炎暑での作業時は、熱中症予防のため、十分に水分補給をしてください。中部地区の更生業者で、平成16年の夏に、熱中症により作業者が亡くなるという悲惨な事故が起こっています。
 
 
残渣抜き取り
残渣処理とも呼ばれ、ドラム缶内部の残液を、バキュームなどで抜き取ります。
 
 
整型
ドラム缶の、缶体を補正・矯正します。
 
*最初に、チャイム整型といって、ドラム
缶の上下巻締め部を、駆動ローラーによって締め付けます。
 
*チャイム整型を終えたドラム缶は、次に缶体や輪体(ビード、ビーダーとも言う)を整えるために、胴整型にかけられます。これは、内部に圧縮空気を注入してドラム缶をはさみ、回転ローラーで補正・矯正します。
別名、胴体整型とも呼ばれています。
 
*この整型工程については、オートメ化の会社は、全数おこないますが、半自動や手動化の場合は、缶体を目視確認して、変形のあるもののみ、かけるパターンが多く見受けられます。
 
*とくに、チャイム整型時は、手指を挟まないように、要注意です。結構、事故を起こしている人が多いです。
 
 
内部洗浄
ドラム缶の内部を洗剤を噴射して、クリーンにします。
 
*基本ベースは、アルカリ洗浄ですが、使用する洗剤は、各社まちまちです。いちばんよく使われているのが、苛性ソーダ系の洗剤です。ただ、リンス不十分な場合に、白い模様が現れることがあり、それを回避するために、珪酸ソーダ系の洗剤を使う場合もあります。あるいは、苛性ソーダ単体で使用することもあります。
また、洗剤の温度が高いほど、洗浄力は高くなります。とは言っても、苛性ソーダ系の洗剤は、60度少々で沸点に達しますから、あまり温度を高く上げすぎますと、ポンピングのとき、ペーパーロック現象を起こします。そうすると、洗剤が噴射しなくなります。
苛性系の洗剤は、強アルカリですから、顔に被ったときは、やけど状態となり、時間経過とともに、ただれます(当方、経験あり)。万が一、被った折は、皮膚用のクリームなど、決して塗布してはいけません。食酢をつけることです。
苛性系洗剤が目に入った場合、失明する恐れがありますので、保護メガネ着装のうえ作業時にはご注意ください。
手についた場合、皮膚がただれたり、切れたりしますので、ゴム手袋を着用ください。
 
*酸洗浄といって、錆の除去に、塩酸または燐酸を用いることがあります。即効性としては、圧倒的に塩酸ですが、周囲の設備や建造物などを、錆させる危惧があります。とくに、湿度の高い折は、塩酸のガスが滞留します。
32%塩酸が販売されており、これを水で半分に薄めて使うことがいいと思います。濃度ですが、ボーメ計を使って、12ボーメになるのがいいと思います。ただし、濃度と錆除去の洗浄力は、必ずしも比例しないので、要注意です。こまめに、新しい塩酸に交換しましょう。
また、作業時は、防毒マスクの着装が、厳守です。無防備状態で作業をしていると、塩酸のガスによってカルシウムを弱くしますから、歯がガタガタになります。
また、塩酸洗浄後は、缶内をきちんと中和し、防錆しなくては、逆に、とんでもない錆が発生します。その方法は、水洗いした後、アルカリ洗浄します。
従いまして、この工程で注意すべきは、両者が混在するとHCl(塩酸)NaOh(水酸化ナトリウム、つまり苛性ソーダ)H 2O()NaCl()と化学反応しますから、ドラム缶内部に食塩水をぶち込むことになります。
 
*特別な洗浄方法として、物理的手法があります。世にいう、鎖洗浄とかグリッド洗浄と呼ばれるものです。噴射洗浄では落ちないさまざまな汚れを、ゆりかご状に回転させて、綺麗にします。
一時期前までは、やたらグリッド洗浄がもてはやされましたが、やはりさまざまなデメリットがあり、個人的には、鎖洗浄のほうが良いと思います。
鎖洗浄は、チェーン洗浄とも呼ばれ、ドラム缶内に適量の洗剤と鎖を入れて洗うのです。従いまして、洗浄後、その鎖を掬い上げて取り除かなくてはいけないので、マンパワーが必要です。
グリッド洗浄とは、鎖の代わりに鉄の玉のようなものを入れます。この場合ですと、自動的に玉をバキュウムして取り除けばいいので、楽ではあります。が、その玉の取りこぼしとか、飛散がネックとなります。
 
*内部洗浄をおこなう前に、外部を水洗いしてきれいにする工程を取り入れているケースもあります。この場合、外部に付着した油分を完璧に落とそうとして、アルカリの洗剤(苛性系の洗剤)を使用することは、あまりおすすめできません。
なぜなら、洗剤分が残っていると、塗装した後、塗料が化学反応を起こし、白濁化(白化現象)したり、時間の経過とともに苛性が結晶化して、白い粉状のものが表面にあらわれるからです。そうなると、最悪でして、濡れタオルで拭き取っても、拭き取っても、白い粉が出てきます。
もし、アルカリ系洗剤を使用したならば、十分にあとで水洗いをしましょう。
 
*洗剤の濃度を、常時管理しましょう。濃度を測るには、ボーメ計の使用をお勧めします。
個人的な感覚ですが、苛性系の洗剤なら、ボーメ度は7~8がいいと思います。ちなみに、酸洗浄の塩酸は、12前後でしょうか。
ただし、濃度と洗浄力の関係は、必ずしも一致しません。こまめに、洗剤を交換しましょう。
また、時折、リトマス試験紙を用いて、PH値を測定しましょう。
 
 
内部乾燥
内部洗浄をおこなった後、残水を除去し、ドラム缶内部を強制的に乾燥します。
 
*内部に温風を入れる乾燥方法や、外部から温度をかけて乾燥する方法があります。
 
*設定温度は、各社各様です。
 
*熱源も各社各様でして、ガスや灯油などです。安価なものとして重油もありますが、硫黄分が多く、脱硫装置がついていないと、錆の発生率が高くなります。
 
*作業に際しまして、労働安全衛生法上、乾燥炉取扱主任者の資格が必要となります。
空気置換
内部換気とも言います。内部乾燥後といえども、ドラム缶内は湿っています。そこで、ドライエアーなどを送入して空気を入れ替えます。この工程をきちんとしないと、結露して錆が発生しやすくなります。
 
*この工程は、各社各様でして、内部検査の後などにおこなうケースもあります。
 
 
⑦内部検査
 ドラム缶内に電球を入れ、洗浄具合をチェックします。
 
*ここで、A缶、B缶を振り分けます。また、もう一度洗浄し直すかどうかを、決定します。
    あくまでも、各検査員の主観に頼ることが多く、最も苦慮するところです。マニュアルや限度見本は、ございません。職人的な技です。かてて加えて、その日の生産予定や出荷状況を把握して、検査しなければなりまん。
  例えば、Bグレードに仕上がってきたと仮定して、再洗いしたらA缶にランクUPしそうと判断した場合、まともに考えたら、高く販売できるA缶に仕上げようとするでしょう。ですが、その日の注文が、B缶のウェイトが多い場合、必ずしも再洗浄するという選択が、正しいとは言い切れないでしょう。
  つまり、前後の仕上がり具合と、出荷状況、コスト計算、および当日投入する原缶のグレード状況を総合的に判断して、格付けしなくてはなりません。ですから、専門的な技量のほかに、営業のセンスも必要になってきます。
 
*天板の裏側については、鏡や内視鏡を用
いて検査します。ただ、あくまでも直接目視でないため、念のため、大栓より指を突っ込んで、直接触れて汚れ具合を確認するのも、ひとつの手法です。
 
 
ショットブラスト
 ドラム缶外部研掃とも言います。大小栓に仮栓をして、ショット球などを用
 い、塗装を剥離します。
 
*カットワイヤーとか、スチールショット(0.6~1.0ミリぐらい)を使用します。個人的には、0.8ミリがいいと思います。
 
*作業者は、労働安全衛生法上、粉じん作業特別教育の講習受講を終了していることが必要です。
 
*作業時は、防塵マスクの着用をすることが大切です。長年、無防備で作業
 をおこなうと、じん肺に罹る恐れがあります。
 
*ショット滓は、一種の金属粉ですから、とくに屋外に保管し湿気があると
 自然発火を起こす恐れがあります。
 
 
洩れ検査
 気密検査、サシ検査とも言います。差圧式、水没式、超音波式の方式があります。近年では、ヘリウム検査も行われつつございます。
 
*差圧式には、加圧と減圧があります。空気圧を加減して、検査します。
 
*水没式とは、水にドラム缶を浸けて、気泡の状態で漏れをチェックします。
 
*超音波式とは、音波を発して漏れの箇 所を確認します。
 
*基本的に、適用圧力は30Kpa以上で、検査をおこないます。ただし、滲み漏れは、検知不能です。
 
*巻き締め部の滲み漏れは、慣れてくれば、その形状によって、直感でわかるようになります。これまた、経験則の世界です。
 
 
⑩塗装
 仮栓または、シールをして、ドラム缶を回転させ、塗装します。
 
 *縦型塗装方式と、横型塗装方式がありま
す。また、塗り方は、自動塗装と手動塗
装があります。
 
*塗料は、フタル酸自然乾燥タイプと、メラミン焼付けタイプがあります。
 
*メラミン焼付けタイプにも、低温タイプ
といって100度ぐらいで硬化させるものと、高温タイプで、150度以上で処理するものがあります。所要時間は、10分以上です。
 
*メラミン塗装には、油性と水性があります。光沢は、いうまでもなく油性のほうがあります。
 
*メラミン塗装については問題ありませんが、フタル酸塗装は、その性質上、塗料滓を蓄積すると自然発火を起こしますので、塗装ブースをはじめとした周囲を、こまめに掃除する必要があります。
 
作業に当たっては、防毒マスクの着用が望ましいです。
 
作業者は、労働安全衛生法上、有機溶剤作業主任者のライセンスを必要とします。また、大量に塗料を扱う場合、消防法上、危険物取扱者(乙種第4類)の免許が必要です。
 
場合によっては、チャイム部や大小栓部の修正をおこなうことがあります。ただ、大小栓部をあまり深く塗りこみすぎると、塗料滓が内部に混入するなどのクレームが、発生することがよくあります。
 
 
 
⑪空気置換
 内部換気のことで、⑥同様の作業をします。製品の安定上、⑥よりも大切です。
 
 
⑫プラグ装着
 指定のプラグを、装着します。
 
 
⑬マーク打ち作業
 仕様通りの、マークを打ちます。
*マーキングには、吹きつけタイプシル
ク印刷タイプがありますが、中古ドラム缶の場合、間違ってもシルクタイプを安易に引き受けてはいけません。凹凸が少しでもあったら、マーキングできませんから、作業性も悪く、コストも高くつきます。
 
 
⑭保管、在庫、出荷
 完成したドラム缶を保管、在庫し、指示通りに出荷します。
 
 
 
以上が、クローズドラムの流れです。ただし、各社各様、作業工程が前後するケースがありますので、お含み置きください。
また、細かな工程は、カットいたしました。あくまでも、概略のプロセスを記述いたしました。